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外国の物語絵本 
小学中級から
「タンタンの冒険旅行」のシリーズより
『タンタンとアルファアート −タンタンの冒険旅行24−』
31×23cm
(ベルギー)
エルジェ 作
川口 恵子 訳
福音館書店
¥1,680(本体価格¥1,600+税5%)
ラフスケッチの遺稿集が24巻目で最後の巻
原作ではラフスケッチのみで、作者逝去のため、完成原稿としては出版されませんでした。
1986年(昭和61年)に、このラフスケッチを集めた遺稿集が発表され、その後2004年(平成16年)に改訂版が出版されました。
日本では2007年(平成19年)に、その改訂版が福音館書店から「タンタンの冒険旅行」シリーズの24冊目として出版されました。
『タンタンとアルファアート』のあらすじ(冒頭部分のみ)
夏の朝、ムーランサール城でハドック船長が眠っています。
誰かがドアをノックして、「朝食をお持ちしました」と声がします。
ハドック船長は執事のネストルだと思って、もう少し寝かしてくれと言いますが、「ダメよ。お薬を召し上がらないと。」という声がして驚きます。
部屋に入って来たのは、ネストルではなくてカスタフィオーレ夫人で、ウィスキーのボトルを持っていました。
そして、カスタフィオーレ夫人は、船長に近づきながら、奇妙な鳥に変身してしまいます。
ラフスケッチとシナリオを一冊にまとめた最後の物語
この巻は、作者エルジェが完成させることなく亡くなったため、鉛筆やペンなどで描かれたラフスケッチと、そのページに描かれたセリフにト書きを加えて編集した、変則的な作りとなっています。
訳者の川口恵子さんの後書きによると、最初にベルギーで出版されたときは、ラフスケッチのみで一冊、セリフとト書きで構成したシナリオ一冊と、分冊されてマニア向けの愛蔵版だったそうです。
その後、2004年(平成16年)に、その二冊をまとめた校訂版が出版され、更にそれを日本語に訳したのが、この巻です。
ラフスケッチがおおむね右側で、セリフとト書きが左側という構成で読みやすく、ラフスケッチも始めの数ページは細かく描きこまれています。
しかし、ページが進むにつれて、絵がメモ程度に簡略化されたものに変わって行き、これからクライマックスに向かう、というところで物語は途切れてしまいます。
その後の数ページは、この物語を描き始める前に練っていた構想のメモが収録されています。
亡くなる寸前まで旺盛だった制作の意欲を強く感じますが、「あと少しで完成だったのに。」という残念な気持ちもします。
「アルファ」に込められた意味は?
読み始めは、「アルファ・アート」の「アルファ」は、単なる「アルファベット」の略の「アルファ」かと思っていました。
しかし、先に述べた訳者の川口さんの後書きによると、「アルファ」はギリシア文字の始まりの「α」で、つまり、「アルファ・アート」は「始まりのアート」ということのようです。
ギリシア文字のアルファベットは「α(アルファ)」から「ω(オメガ)」まで24文字ありますが、ちょうど24巻目に当たるこの物語に、ωではなくαと名付けたのは、エルジュの洒落なのだろうか、と川口さんは述べています。
また、エルジェは死の直前までこの物語を描き続けていたので、この物語がタンタンの最後の冒険になることは、予感していたはず、とも述べています。
最後の作品に、「始まり」である「アルファ」と名付けたことには、洒落以外にもいろいろな意味が込められているように思えます。
タンタンの冒険に終わりはなくて、20世紀という時代を描き続けたこの物語の読者もまた、たぶん、尽きることはなく、新しいファンを獲得してゆくことでしょう。
テーマは美術品に絡む「悪」
ストーリーは、タイトルから想像できるように、美術品に関する悪事で、それにカルト宗教が絡みます。
日本の、ある程度以上の年齢の読者は、某宗教の事件を思い起こすかも知れません。。
また、この作品のカルト宗教の教祖のシンボル・マークが登場しますが、これはEの文字を背中合わせに並べたもので、ちょうど漢字の「王」のように見えます。
偶然の一致でしょうけれど、日本人の読者には、面白く感じられるところです。
この巻はラフスケッチなので、いつものエルジェのカラフルな色彩や流麗な線が見られないのが残念ですが、シナリオを読み、ラフスケッチを眺めるだけでも、物語に引き込まれてゆきます。
そして、「タンタン絶体絶命!!」というタンタンの危機まで物語が描かれています。
この後はきっと、タンタンが自力プラス他力で危機を逃れて、悪人たちの仕業が白日の下にさらされるはずだったことでしょう。
そしてまた、別の角度から考えると、このラフスケッチの物語は、一般の読者には見ることのできなかったエルジェの制作過程を始めて明らかにしてくれた貴重な本ということでもあります。
未完成原稿ということで、読むのをためらう読者がいるかも知れませんが、このシリーズのファンであれば、必ず楽しめる巻です。
ぜひ、最初で最後のラフスケッチ集を読んでいただきたいと思います。
『タンタンとアルファアート』関連のホームページ
「タンタンの冒険旅行」シリーズの出版社
福音館書店
タンタンの公式ホームページ
TINTIN JAPAN
作者 エルジェの母国 ベルギーに関するホームページ
ベルギー観光局